
会社の経営者において、承継問題となる多くの場合が「株式」についてです。
株式は、会社を所有する権利(所有権)と考えられます。会社の保有する財産は間接的に株主が所有しているということになります。
ここで、承継問題として特に問題となるのは、
- 株主の権利
- 株式の評価
の2点が考えられます。
この問題については、どちらか一方の解決では足りず、総合的に問題を解決する必要があります。
2.の株式の評価については、一般的に「株価」を考えますが(非公開株式にも株価は存在します。)、相続税対策についての比重が高いため、税理士や公認会計士の方に譲ることとして1.について特に考えてみたいと思います。
1.の株主の権利としては、株式には配当を受ける権利などの共益権、株主総会において議決権を行使する権利などの自益権があります。承継問題において、特に問題となるのが、自益権である「議決権」です。
更に、議決権においては、
- 1)株式の共有
- 2)会社の意に反する株主
という問題が生じます。
1)の問題というのは、民法上、相続が発生すると、株式の最小単位は1株ですので、仮に1000株あったとしても1株1株それぞれが法定相続分に応じて共有となります。これは遺言や遺産分割協議などで株式の相続人を決定すれば解決はしますが、何らの手続がされない場合は法律上共有となります。 株式が共有となった場合は、原則、権利行使者を定め会社に通知しなければ権利行使ができなくなってしまいます(会社が同意すれば別)。
続いて2)の問題というのは、相続は、配偶者は常に相続人となり、第1順位を子(直系卑属)、第2順位を親(直系尊属)、第3順位を兄弟姉妹として相続人になります。
順位というのは、第1順位がいない場合は第2順位へ、更に第2順位がいない場合は第3順位へ、という順序で相続権を取得する関係を言います。株式は、相続の対象となるため、筆頭株主などが亡くなった場合で、第3順位でさらにその兄弟が死亡している場合など、その兄弟の子まで相続が発生します。
会社として、筆頭株主の変動は大きな問題であり、その親族とは言えど、今まで会社の経営に参画していない者が相続人となる場合、会社にとっては、意に反して議決権をいたずらに行使される恐れを抱えなければならず、不安定の状態となってしまいます。

種類としては、
- 剰余金の配当について特別の定めのある株式
- 残余財産の分配について特別の定めのある株式
- 議決権について特別の定めのある株式
- 譲渡制限が付された株式
- 取得請求権付株式
- 取得条項付株式
- 全部取得条項付株式
- ある決議事項のうち特定の種類の株式の決議を要するとする株式
- 取締役及び監査役の選任権限付の株式
という以上のものがあります。
- ※1.は、いわゆる株主配当です。これについて優先的又は劣後的な定めを設けることができます。
- ※2.は、会社が解散した場合、会社に残った財産(残余財産)は会社の所有権を有する株主へ帰属しますが、この扱いについての定めです。
- ※3.は、議決権の行使についての規定で、一般的に「制限」する場合に良く利用されます。
- ※4.は、特別な種類についての譲渡に制限をするわけですが、中小企業の場合は、多くが株式のすべてにこの規定が設定されています。
- ※5.は、会社にその種類の株式を取得することを請求できる株式であり、対価として事前に決められたものが交付されるものです。
- ※6.は、ある一定の事由が発生した場合に、その種類の株式を会社が取得するというものです。
- ※7.は、株主総会の特別決議により、その種類の株式を会社が取得することができるというものです。
- ※8.は、いわゆる「黄金株」や「拒否権付」と言われる株式で、一定の決議を行う場合には、その種類の株式の決議を有するというものです。
- ※9.は、取締役又は監査役について、一定数の選任権限が与えられている株式です。

事業承継において種類株式を利用するパターンとしては、
上記3.の無議決権株式を利用するのが一般的です。
普通株式のみを発行する会社が、普通株式と無議決権株式の数種の株式を発行する会社とし、
遺言などにより、後継者へ普通株式を、その他の相続人へ無議決権株式を相続させる旨の遺言書を作成するなどします。
状況に応じて、3.の無議決権株式に1.の配当に優先権を与えたり、将来的に会社が取得するとするため6.の取得条項や、7.の全部取得条項を付したり、8.の拒否権付株式や、9.の役員選任権付の株式を、後継者に相続させたりと様々な組み合わせを行うことができます。
こういったことを検討するに際しては、
- 会社の規模
- 株主構成
- 株価の評価
- 推定相続人の調査
- 推定相続人間の人間関係
- 役員・株主と会社の関係
など、様々な視点から状況を把握し、それぞれに適した対策を採る必要があります。
※種類株式とは異なりますが、事業承継円滑化法などの制度も存在しますので有効的に利用を考えて見る価値はあります。
※事業承継においては、種類株式を利用する方法以外においても、株式移転や一般社団など様々な手法が存在します。

手続報酬 | ※打ち合わせにより決定します。 |
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登録免許税 | 金3万円(※種類株式の変更のみの場合) |
公証人手数料 | ※遺言書の記載内容により異なります。 |
※登記事項証明書、住民票の取得や戸籍謄本の収集につき、別途報酬・実費がかかります。
※消費税については、平成26年4月1日時点の税率(8%)で計算しております。消費税の増加により税込報酬額は変更になります。
※実費を立替とする場合は、実費の一割程度を報酬額に加算させて頂きます。


- 定款
- 株主総会議事録
- 株主全員の同意書
- 委任状
※会社の種類株式発行状況と発行する種類の株式によって異なります。

筆頭株主である社長が、推定相続人である息子に会社を継いでもらいたいと考えており、その為に株式を息子に相続させたいと考えているが、個人資産の割合の大半が会社の株式であることから、他の推定相続人の遺留分を考慮すると、他の推定相続人が株式を取得する可能性がある場合。
会社の株式の一部を無議決権株式などとし、それを他の推定相続人へ遺言により相続させるとした。